死後事務委任契約というものがあります。死後事務委任契約は契約の一種なので口頭でも成立します。しかし、委任者の生前意思をしっかり確認するために書面化するのがベターです。
作成方法としては、実印を押印した上で印鑑証明書を添付する方法、公正証書遺言の中に挿入する方法、公正証書として公証役場で作成する方法があります。
契約書作成時の注意点
1.契約終了の時期
一般的に死後事務委任契約は、委任者の死亡後に効力を生じます。委任者の死亡は委任の終了事由となりますが任意規定のため反対の特約は許されます。
そこで死後事務委任契約の場合委任者がなくなった場合でも契約終了とならない旨を書いておく必要があります。
また委任事務の執行段階では委任者の地位は原則委任者の相続人に引き継がれます。委任はいつでも解除できますが、その一方制限も可能です。そこで委任者の相続人は原則として死後事務委任契約を解除できない旨の特約事項を設けなければなりません。
2.死後事務の執行費用や受任者の報酬
受任者の報酬は特約がなければ支払い義務はありません。受任者が報酬を欲しい場合は必ず明示しておく必要があります。執行費用に関しては委任者やその相続人、相続人がいない場合、相続財産法人の負担となりますが、契約条項であらかじめ明示しておくことが望ましいです。
3.死後事務執行の準備
死後事務委任契約では契約の性質上、受任者の事務の執行は委任者がなくなってから行うことになります。委任者の死亡後に事務執行ができない障害が発生してしまうと死後事務委任契約の執行ができなくなる恐れがあります。したがって入念に準備しておくことが重要です。
受任者は死後事務委任契約を締結するにあたり、死後事務執行の相手方において受任者が執行権限が有すると認められるかを確認しておく必要があります。
緊急で作成する場合
最初に述べたように死後事務委任契約は公正証書である必要はありません。緊急で入院することになったり、余命宣告をされたりなどで、大手術を控えているなど、急ぎで作成したほうがいい場合もございます。その場合は公正証書で書く時間が無いかもしれません。このようなケースは専門家を頼り、自筆証書遺言などと一緒に作成したほうがいいでしょう。
記載すべき内容
死後事務委任契約で押さえておくべきポイントは以下の通りです。
(1) 行政官庁等への届出事務(死亡届の提出、戸籍関係、健康保険や年金)の事務
(2) お葬式全般に関する事務
(3) 永代供養に関する事務
(4) 生活用品・家財道具等の遺品の整理・処分に関する事務
(5) 医療費や入院費等病院関連費用の清算手続き事務
(6) 老人ホーム等の施設利用料等の支払い及び入居一時金等の受領に関する事務
(7) 公共サービス等の名義変更・解約・清算手続きに関する事務
(8) 別途締結した任意後見契約の未処理事務
(9) SNSアカウントの抹消や管理などの事務