原則として相続人全員で遺産分割協議を行い、手続きを進めていかなくてはいけません。そのため相続人が一人でも行方不明の場合、厄介となります。
この時遺産分割協議はどのように進めていけばいいのでしょうか?以下の具体例を交えて解説します。
被相続人一郎は配偶者の花子、子の二郎、子の三郎を残して死亡した。子の三郎は過去に二郎ばかり贔屓され家庭内で冷遇を受けていました。また花子と二郎からいじめられていた。そのため三郎は高校卒業以降一人暮らしをし独立、家庭内の二郎と花子とは完全な絶縁状態、ごく稀に一郎と連絡をとっていたのみでした。
今回一郎の死亡により花子が遺産分割協議で話し合いたいと三郎に仕方なく声をかけましたが三郎は「もう関係ない人たちだしあなたたちとは会いたいくない」といい拒否。花子と二郎は三郎の協力を得られないと判断し不在者の財産管理人の選任を申し立て管理人を交えて遺産分割協議を行うこととした。(戸籍上は家族)
財産管理人の申し立て
共同相続人(今回のケースの場合、花子と二郎)は利害関係人として財産管理人の選任審判を家庭裁判所に申し立てすることができます。申し立てすることができる裁判所は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。
申し立てにかかる費用
- 収入印紙800円分
- 連絡用の郵便切手
- 官報公告料4,230円
(引用 : 裁判所HP)
申し立てに必要な書類
- 申立書
- 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 被相続人の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 被相続人の兄弟姉妹で死亡している方がいらっしゃる場合,その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 代襲者としてのおいめいで死亡している方がいらっしゃる場合,そのおい又はめいの死亡の記載がある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
- 財産を証する資料(不動産登記事項証明書(未登記の場合は固定資産評価証明書),預貯金及び有価証券の残高が分かる書類(通帳写し,残高証明書等)等)
- 利害関係人からの申立ての場合,利害関係を証する資料(戸籍謄本(全部事項証明書),金銭消費貸借契約書写し等)
- 財産管理人の候補者がある場合にはその住民票又は戸籍附票
財産管理人になるためには特別な資格は必要ないですが、相続財産を管理するのに最もふさわしい人を選びます。中立である弁護士・司法書士が選ばれることもよくあります。ただし利益相反にあたる他の相続人等はなれません。
相続人に不在者がいる場合
不在者が財産管理人を置かなかった場合、家庭裁判所は請求によりその財産の管理について必要な処分を命ずることができます。(不在者の住所の管轄の家庭裁判所で行います。)また財産管理人の選定も行えます。
基本的にこの場合の遺産分割協議書作成は、存在している相続人と財産管理人で行います。
財産管理人は遺産分割協議を成立させるにあたり家庭裁判所の許可が必要となります。