遺言執行者の権限
遺言の内容によっては、相続人との対立、他の相続人の非協力等、遺言の内容の執行が困難な場合もあります。
このような場合に、遺言の内容の実現を遺言執行者に委ね遺言内容を実現するために、相続財産の管理その他の遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を定められています。
遺言執行者は遺言内容を実現することを目的として、遺言執行に必要な一切の行為をする権限が明確にされました。
遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生じます。遺言執行者は遺言者の意志を実現するという責務を果たせば良いということです。
また、遺言執行者は就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければなりません。さらに遺言執行者はその任務を開始した時は、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければなりません。
特定財産に関する遺言の執行
特定財産承継遺言の頁でも記載しましたが、「相続させる旨」の遺言があっても法定相続分を超える部分については登記を具備しなければ第三者に対抗できません。そのため遺言執行者は特定財産承継遺言があったときは、対抗要件を備えるために必要な行為をすることができます。
遺産の分割方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人または数人に承継させる旨の遺言(特定財産承継遺言)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第899条の2第1項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。(第1014条2項)
遺言執行の妨害
- 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。
- 前項の規定に違反した行為は無効とする。ただしこれをもって善意の第三者に対抗することができない。
- 省略
改正相続法前は遺言執行者がある場合には、相続人が相続財産の処分や遺言の執行を妨げる行為をした場合は絶対的に無効とされていました。
しかし遺言執行者がいなければ対抗関係に経ち登記を先に備えたほうが権利を主張できるのに対し、遺言執行者がいれば対抗関係とならず絶対的無効を主張できてしまいます。
遺言執行者が要るか否かは遺言の存否、遺言の内容を知らない第三者に不測の損害を与え、取引の安全を害する恐れがあるため、善意の第三者には対抗できない規定が設けられました。
そのため相続人の債権者は相続財産に権利行使をする場合遺言執行者がいても妨げられず、対抗関係で決することになります。