民法という法律が、遺言の方式について厳格に定めています。この民法のルールに則った遺言を作成しなければなりません。このルールから外れてしまった遺言は全て無効になります。せっかく作成しても死後に無効になってしまい、作成した意味が無くなってしまうということになってしまいます。
例えば、録音による遺言は本人の声であったとしても無効ですし、メールによる遺言も無効です。
このように、非常に厳しいルールですが、民法がこれほど厳しいルールにしているのには、後の相続争い、変造、偽造などを防ぐ意図があるといわれています。相続というのは、それだけ争いになりやすいということです。
テレビドラマの題材によく使われるほどですから、皆さんもご存じかと思います。ではどのような方式で遺言を残せばいいのでしょうか。
民法は以下の種類の方式を定めています。
普通方式 |
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特別方式 |
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特別方式は、死亡が差し迫っている場合などで普通方式での遺言ができない場合に用いられる方式です。非常に特殊な事情のときだけやむを得ず認められた方式です。
実例もほとんどありませんので、普通方式での遺言を残すのが一般的です。今回は、普通方式の中の1つである、「秘密証書遺言」についてご説明いたします。
あまり馴染みはないかもしれませんが秘密証書遺言とは、簡単にいうと「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の間をとったような遺言方式です。遺言者が遺言書を作成し、遺言内容は秘密にしながらもその遺言書の存在を公証人と証人に確認してもらうことができます。実際にこの方式が使われることはあまりないようですが、このような方式も民法では定められています。一般的なものはやはり「公正証書遺言」や「自筆証書遺言」になります。
秘密証書遺言のメリット
さて、秘密証書遺言のメリットはまず、自筆証書遺言と違いワープロやパソコンで遺言書が作成できます。
そしてなんといっても遺言内容を秘密にできるということです。秘密証書遺言も公証人と、証人が関わってきますが、公正証書遺言と違いそれらの者に内容を秘密にすることができます。秘密証書遺言は公証役場で作成したという記録がされますので、偽造や変造などのリスクも比較的減らせます。
このように、相続人間でのトラブルの可能性を比較的減らすことができます。
秘密証書遺言のデメリット
デメリットとしては、まず公証役場・公証人が関与してきますのでそれだけ手間と時間がかかるということと、作成費用もかかってきてしまいます。証人も用意する必要もありますし、後日家庭裁判所での検認手続きも必要になります。
また、公証人が遺言書の内容を確認しておりませんので、専門家が介入しないために遺言が厳格なルールから外れてしまい、無効になりやすいといったことも挙げられます。
また、作成したという記録が公証役場に残るだけですので、基本的には遺言書自体は自らで保管していきます。これにより紛失の恐れがありますし、第三者(利害関係人)によって隠匿などをされてしまう可能性もあります。
このように安全性、確実性という観点から「公正証書遺言」のほうが使い勝手が良いです。また、そちらを選択される方が多いのも事実です。
秘密証書遺言の要件
では、秘密証書遺言が有効になるための厳格な要件をご紹介します。
秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
- 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
- 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
- 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
- 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び人とともにこれに署名し、印を押すこと。
このように、公証人と証人は遺言書の中身を見ることなく、封筒の外側に署名押印するだけです。これが秘密証書遺言の特徴になります。
方式に欠ける秘密証書遺言の効力
秘密証書遺言では「証書に用いた印章をもってこれに封印すること」が要件ですが、遺言書の印影と封筒の印影が異なっている場合でも、その遺言書は「自筆証書遺言」として有効になる場合があります。
つまり、自筆証書遺言としての要件が満たされていれば(中身の全文、日付、氏名が自筆で作成されており、押印がある)秘密証書遺言としては無効ですが、自筆証書遺言としては有効になることがあります。
秘密証書による遺言は、前条に定める方式に欠けるものがあっても、第968条に定める方式を具備しているときは、自筆証書による遺言としてその効力を有する。
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このように、秘密証書遺言は、自筆証書遺言と公正証書遺言の欠けている部分を補える遺言方式となります。
遺言の内容を知られたくない場合には秘密証書遺言の方式も検討していきましょう。
しかし、公正証書遺言と同じく公証人とのやり取りなどで時間や面倒な手間がかかります。さらに、証人が2人以上必要ですから証人選びも慎重に行わなければなりません。
もし、ご自分でのお手続きや証人選びに少しでもご不安がある方は専門家へ相談することも検討していきましょう。
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