家族信託は高齢者、未成年者、障害者などを受益者として財産管理や生活支援をする目的が一般的です。従いまして、受益者自身が受託者の業務が適正に行われているのかどうかチェックするのが難しい部分がございます。このような場合に受益者に代わって受益者に代わって受託者が信託目的にしたがって業務を遂行しているかを確認する人のことを信託監督人と言います。
信託監督人の設置の義務はございません。しかし長期の財産管理を誰の監督も受けずに放置していることはあまりお勧めできません。実際に成年後見人でさえ横領などの不祥事が多々あります。
信託監督人の選任
信託監督人はどのような人がなれるのでしょうか?一般的に信託監督人は資格などはいらないため誰でもなることが可能です。ただし信託法により欠格事由もございます。
(信託管理人の資格)
第百二十四条 次に掲げる者は、信託管理人となることができない。
一 未成年者
二 当該信託の受託者である者(信託管理人に関する規定の準用)
第百三十七条 第百二十四条及び第百二十七条の規定は、信託監督人について準用する。この場合において、同条第六項中「第百二十三条第四項」とあるのは、「第百三十一条第四項」と読み替えるものとする。
従いまして家族の中から信託監督人を選択するケースも想定されます。(例 : 受託者が長女、信託監督人が長男)しかし利害関係のある兄弟などですと公平な判断ができず、紛争の種になったりするリスクがあります。また信託監督人には受託者を解任する権限を持たせることもできるので、受託者を解任してしまうケースも出て来ます。従いまして信託監督人は家族以外の人を選任することを勧めます。信託監督人は財産を預かることはないため誰でも就任できます。とりまとめをした司法書士や弁護士などが適任であることが多いです。
一方税理士を信託監督人にするケースもあります。こちらは適切な判断なのでしょうか?税理士が受託者かつ受益者である父、もしくは父の会社の顧問として報酬をもらっているケースが多いでしょう。そのため世代交代までは父親のために監督人業務を遂行できます。しかし代が変わり息子が後継者となった場合、親のために財産管理をする息子が顧問契約の当事者となるので、この状況で税理士が自分の雇い主を監視監督するのは難しいと言えるでしょう。形骸化を防ぐためにも税理士は信託監督人として避けたほうがいいでしょう。
信託監督人は以下のような義務もございます。
(信託監督人の義務)第百三十三条 信託監督人は、善良な管理者の注意をもって、前条第一項の権限を行使しなければならない。2 信託監督人は、受益者のために、誠実かつ公平に前条第一項の権限を行使しなければならない。
信託監督人の仕事
信託監督人は具体的に何をする人なのでしょうか?信託監督人の業務としては3〜6ヶ月に一度くらい財産のチェックをします。また受益者にきちんと財産給付が行われているかのチェックをします。それ以外にも不動産の売買などの財産の処分行為には信託監督人が事前にチェックし承諾を与えることが多いです。