寄与分

寄与分

  • 「被相続人(亡くなった人)の介護をしていた」
  • 「被相続人が農業を営んでおり無償で10年以上手伝ってきた」

 

など、特に亡くなった人に対して深い関わりを持っておりお手伝いをしている場合がありますよね。

 

法定相続人が自分しかいなければ特に問題がありませんが複数いる場合、その他の相続人と同じ金額で遺産分割されたら納得が行きません。そこで公平にするための制度が寄与分です。

 

寄与分の法的根拠は民法904条です。寄与分が認められるケースやそうでないケース、実際にどれくらいもらえるのかなどを具体的に解説します。

 

民法904条その2(寄与分)

1.共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。

2.前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。

3.寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。

4.第二項の請求は、第907条第2項の規定による請求があった場合又は第910条に規定する場合にすることができる。

 

特別寄与分

寄与分は原則として相続人でないともらうことができません。しかしながら2019年の大幅な民法改正により法定相続人でなくても条件を満たせば特別寄与分として請求できることになりました。

 

特別寄与分がもらえるためには以下の条件を必ず満たさなくてはなりません。

 

●被相続人の財産の維持増加に貢献した

●被相続人の親族である

 

被相続人の財産の維持に貢献したとは、被相続人が生前農業を行なっておりそれを無償で手伝った。などといったことです。無償で手伝うことにより被相続人がアルバイトや給料などを払う必要がなくなり財産の維持に貢献したと考えられます。

 

特別寄与分が請求できる人は、法定相続人以外の被相続人の親族です。具体的には民法上の親族で、6親等以内の血族、配偶者、3親等以内の姻族を指します。

 

これにより被相続人の世話をしていたいとこなどが財産を請求することができ、実質的な負担に応じた配分にすることができるのです。請求する相手は相続人となります。なお特別寄与分には相続税がかかります。

 

具体的には

  • 相続人とならなかった被相続人の両親や兄弟姉妹
  • 被相続人の配偶者の兄弟姉妹
  • 被相続人の配偶者の兄弟姉妹の子ども
  • 被相続人の配偶者の両親
  • 被相続人の配偶者の両親の兄弟姉妹
  • 被相続人の子どもの配偶者
  • 被相続人の孫の配偶者
  • 被相続人のひ孫の配偶者
  • 被相続人の兄弟姉妹の配偶者
  • 被相続人の兄弟姉妹の子どもの配偶者
  • 被相続人の配偶者の祖父母

 

が特別寄与分を請求できる権利があります。一方法定相続人や内縁の妻などは請求できません。

 

寄与分と登記

寄与分が定められた場合、その寄与分を反映した相続分通りで相続登記することになります。法定相続分もしくは指定相続分通りに相続登記を経由した上で、寄与分取得者に所有権移転登記をする必要はありません。

 

また寄与分の協議と遺産分割協議がともにされた場合でも、それらの協議によって定められた相続分での相続登記の申請することが可能です。

 

法定相続分もしくは指定相続分通りに共同相続登記がされた後に寄与分が定められる事もあります。このとき登記された相続分と異なる相続分になった場合は、相続登記の「更正の登記」を行う必要があります。

 

寄与分が定められたことにより共同相続人の相続分が法定相続分または指定相続分と異なることになった場合において、相続による所有権移転登記を申請するときは、登記原因を証明する情報の一部として寄与分が定められたことにより、法定相続分または指定相続分と異なる相続分となったことを証する情報提供することを必要とします。

 

寄与分がもらえる条件

寄与分は誰でも簡単にもらえるわけではありません。以下で述べる特定の条件を満たす必要があります。

民法904条では次の条件を満たす場合のみ寄与分が認められるとされています。

 

  • 寄与行為が特別の寄与であること
  • 寄与行為が被相続人の財産の維持や増加に貢献していること
  • 共同相続人の寄与行為であること(特別寄与分の場合は先の条件を満たす人の寄与行為であること)

 

ここでいう「特別の寄与」とは無償性、継続性、専従性を満たしている必要があります。寄与分が認められるのは以下の型です。

 

  • 家事従事型
  • 療養看護型
  • 扶養型
  • 財産管理型
  • 出資型

 

財産管理型では、被相続人の不動産の財産処分において交渉等により通常より高い評価額での買取や立ち退き交渉などを行うことにより通常よりも財産の増加に貢献したということで寄与分が認められたケースがあります。

 

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