民法896条
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
法律には、相続人は被相続人の財産の「一切」を承継すると書いてあります。
「一切」というのは、まるごと全てということです。つまり、亡くなった方の借金などのマイナスの財産も受け継ぐということです。しかし、どうでしょう。何もしていないのに被相続人のマイナスの財産も受け継いでしまうというのは相続人としては非常に困ります。
そこで、民法という法律は相続人に「相続の放棄」「単純承認」「限定承認」という3つの方法を選択できるようにしました。
相続する財産がプラスの場合であれば、そのまま受け継ぐといったことでもかまいませんが、マイナスの財産が多く、受け継ぎたくない場合は相続放棄や限定承認などの方法をとっていきます。
民法922条
相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。
単純承認であれば、マイナスの財産も含めて全ての財産を相続しますから、負債が多い場合は相続人が自らの財産で弁済していかなければならなくなるかもしれません。
マイナスの財産が多ければ、相続放棄という手段もあります。しかし、相続放棄はプラスの財産も含めて全て放棄してしまいます。
プラスの財産が多いのかマイナス財産が多いのか分からない場合、もしプラスの財産が多ければ損をしてしまいます。このような場合にこの「限定承認」という制度があります。
限定承認とは、被相続人のマイナスの財産を被相続人のプラスの財産の限度で弁済していきます。弁済してプラスが残れば、そのプラス財産は相続人が相続します。被相続人のプラスの財産では弁済しきれなかった、つまり負債がプラス財産より多かった場合は、その責任を相続人は負いません。
このように、限定承認というのは非常に相続人に都合の良い制度です。なら、この限定承認をしとけばとりあえずいいんじゃないかと思われるかもしれませんが、実際の世の中ではあまり使われていません。
今回は、この「限定承認」についてご説明していきます。
限定承認があまり使われていない理由
限定承認は、相続人に非常に有利な制度であるにも関わらず世の中ではあまり使われていません。なぜでしょうか。それは、限定承認にはデメリットが多いからです。
民法923条
相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。
その理由として、まず限定承認をするには相続人全員の手続きが必要であるということです。3カ月の期間の間に相続人全員と足並みを揃えないといけないというのは、非常にハードルが高いと思われます。
また、相続放棄と違い限定承認は手続きが煩雑になります。
家庭裁判所への申述だけではなく、その後の債権者等への公告手続き、その後の債権者等への弁済等の清算手続きをしなければなりません。
債権者や受遺者への弁済が終わり、その後にまだ遺産が残っていれば最終的に相続人の元へ遺産がきます。このように限定承認はハードルが高く、また手続きも非常に面倒かつ時間がかかってしまう為に、あまり使われていない制度なのです。
限定承認のメリット
さて、このように限定承認は相続財産の範囲以上の責任を負わないという非常に相続人には大きなメリットがある制度ではありますがその反面、相続人全員で行わなければならず、また手続きも煩雑になってしまうというデメリットもあり使いにくい部分もあります。
しかし、限定承認にはメリットがもう1つあります。それは、どうしても残したい先祖代々の家宝がある場合や、自宅などがある場合にそれを残すことができるのです。
つまり、借金などが多そうであっても、どうしても残したい家宝や自宅などがある場合、それを評価額で買い取ることができれば手元に残しておくことができるのです。
これは、相続放棄にはない大きなメリットです。相続放棄は全て放棄しなければならないため一部を残しておくといったことができません。
このように、相続財産を手元に残したい場合には、検討する余地がでてくる制度になります。
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このように、熟慮期間は3カ月しかありません。この間に、相続放棄をするのか限定承認をするのかを決めて手続きを行っていく必要があります。
これは、非常に短い期間といえますので、お手続きにお困りであれば専門家へ相談することも検討していきましょう。
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