相続財産範囲③

民法896条
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

法律には、相続人は被相続人の財産の一切を承継すると書いてあります。

「一切」というのは、まるごと全てということです。つまり、プラスの財産も受け継ぎますが、亡くなった方の借金などのマイナスの財産も受け継ぐということです。

ではどのような財産を受け継ぐのでしょうか?

プラスの財産には以下のようなものがあります。

プラスの財産
  • 不動産(土地、建物、マンションなど)
  • 動産(現金、自動車、衣服、貴金属など)
  • 有価証券(小切手、株券など)
  • 債権(貸金債権、賃借権、預貯金債権、損害賠償請求権など)
  • 物権(抵当権、地上権、質権、留置権など)
  • 知的財産権(著作権、特許権など)

マイナスの財産としては、借金や住宅ローンなどの負債や、未払いの税金、家賃、医療費などがあります。

 

被相続人が訴訟中に亡くなってしまった場合は、訴訟上の地位も承継されることがあります。このように、様々なものを丸ごと受け継ぐことになるのです。

 

一身専属権

民法896条但書
ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

 

このように、一身専属権は相続しないとあります。一身専属権とは、被相続人だけが行使できる権利義務で、その人固有のものなので相続によって受け継ぐことができません。

 

例えば、わかりやすい例では年金受給権や生活保護受給権などです。このようなものは、亡くなった方しか受け取ることができないものです。一身専属権などと難しくいっていますが、例えをみると、このただし書きは当たり前のことを言っているに過ぎないことが分かります。被相続人の年金受給権などを相続できるわけがないですよね。被相続人の一身に専属する権利だからです。

 

他には、身元保証人の地位やゴルフ会員権や労働債務などがあります。

 

一身専属権であるにもかかわらず相続されるものも一部あります。代表的なもので慰謝料請求権があります。例えば交通事故で死亡してしまった方の精神的苦痛を慰謝するための損害賠償請求権などです。これは相続人が受け継いでいくことになります。

 

生命保険金

相続財産になるのかならないのかが、問題になる場合があります。よく問題になるのが生命保険請求権です。死亡等によって支払われる保険金のことですね。

 

これは、被相続人自身が受取人になっている場合には、被相続人の保険金請求権が相続財産となります。一方、生命保険受取人を相続人のうちの一人と特定したような場合には、この保険金請求権は、相続財産となりません。その受取人である相続人の固有の権利として保険金を請求していくことになるのです。

 

その他に、死亡退職金や葬儀費用なども一般的には相続財産にはならないとされています。

系譜、祭具及び墳墓の所有権

民法897条
系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

系譜とは、先祖代々の家系を表示するもの。祭具とは、位牌、仏壇、十字架など。墳墓とは、墓石、墓碑などのことです。このようなものを祭祀財産といいます。

 

これらの祭祀財産も相続財産にはなりません。複数の相続人で分割してしまうと、後々になって祭祀を執り行う際に不都合があるからです。

 

祭祀を主催する者を別途定めて、その者に祭祀財産を単独で承継させます。(祭祀承継者)

 

被相続人の指定があれば、その指定された者が祭祀承継者となります。

 

被相続人の指定がなければ、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継することになります。被相続人の指定もなく、慣習もなければ、家庭裁判所が祭祀承継者を決めていきます。

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このように相続財産(遺産)と一口でいっても様々なものがあります。また、相続財産になるのかならないのかというのも相続人との関係で複雑になってきます。

 

もしお困りであれば専門家へ相談することも検討していきましょう。

 

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