相続放棄が出来る時期
相続放棄は相続開始後にしかできません。被相続人が生前に相続人となる者(推定相続人)に対し「私が死んだら相続放棄をするように」と言われても、書面に残しても無効です。
また、遺言書に残された相続人に相続放棄を求める記載があったとしても、相続放棄の効力はありません。
熟慮期間
熟慮期間は自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月内です。相続人が数人いる場合は、熟慮期間も各別に進行します。
また、相続人が制限能力者であった場合(未成年者等の場合)は、法定代理人が制限能力者のために相続があったことを知った時から起算します。
また、熟慮期間は利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸張することができます。(民法915条但書)
相続人が熟慮期間内に死亡した場合
第一の相続人が、相続の承認・放棄をしないまま熟慮期間内に死亡した場合、第二の相続人が第一、第二の相続双方について承認・放棄をする権利を承継します。
この場合の熟慮期間は第一の相続については第二の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算します。
相続の承認
相続の承認をすると、相続放棄は出来なくなります。
相続の承認とは相続人が被相続人の権利義務を全面的に承継することを認めることです。
熟慮期間中に相続の承認をした場合でも、相続の承認の撤回はできません(民法919条1項)
相続財産の法定単純承認
相続人が相続の承認をしていなくても次の場合は単純承認をしたものとみなされます。
相続人が相続財産の全部または一部を処分した時(民法921条1号)
- 相続人が相続財産である不動産を売却した
- 相続人が相続財産である金銭債権を取り立ててこれを消費する行為
- 相続財産に属する建物に放火して消失させた場合
但し、保存行為、短期賃貸借の場合は処分行為に該当しません。
- 相続人が相続財産である建物の不法占有者に対し明渡しを求める場合
- 相続人が相続財産である不動産の不実の登記名義人に対し持分権に基づき抹消登記請求訴訟を提起する場合
相続人が熟慮期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかった時
この場合も、単純承認として扱われます。
処分は相続人が自己のために相続開始を知り又はこれを確実に予想しながらあえて処分したことを要します。
相続放棄をしても次の場合は単純承認となります
相続人が限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し
私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。
ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は
この限りではありません。