事業の相続

個人事業や法人の相続

相続というと不動産や現金・預貯金のイメージが強いと思いますが、被相続人が行なっていた事業(家業)も相続の対象となります。

例えば被相続人が花屋や魚屋などの個人商店をしていた場合や農業を行なっていた場合などです。

一方株式会社など法人化している場合は、少し事情が変わってきます。今回は事業に関する相続についてお話ししていきます。

個人事業の相続

生前に被相続人が個人事業を営んでいた場合、その事業用の資産は全て被相続人個人の財産となります。

相続人が一人であればなんの問題もありませんが、複数人いる場合、遺産分割協議が発生するため少し注意が必要です。

仮に遺産分割で失敗してしまうと事業そのものの継続ができなくなってしまいます。相続人が複数いて遺言で全財産を後継者のみに継承するとしてしまうと当然他の人の遺留分を侵害することになります。家族仲が悪い場合、遺留分の侵害請求をしてくる可能性も否定できません。

トラブルを起こさないためにはまず個人用の資産と事業用の資産を明確に分け、事業用の資産を相続人の一人に相続してもらい、他を分け合うとするのが最善でしょう。

 

事業用資産に該当するもの

事業用資産といってもどこまでが事業用でどこまでがプライベートかの基準が分からないと困りますよね。以下にあげるものが事業用資産に該当します。

 

  • 土地建物 ※
  • 借地権、借家権
  • 自動車
  • 工場など営業用の設備
  • 売掛金債権
  • 商品、製品
  • 営業上の債権(損害賠償など)
  • 特許権、商標権
  • 現金、預貯金(事業用)
  • 買掛金
  • 営業権(のれん、屋号)


※自宅兼店舗の場合は店舗部分が事業用資産になります

 

事業の相続でトラブルを防ぐには

一方事業用の資産を公平にするため等分で遺産分割した場合、営業に支障をきたす可能性もあります。では一体どのようにしてトラブルを未然に防げばいいのでしょうか?

 

1つは明確に被相続人が生前に遺言などで意思をはっきりと伝えることです。自分の事業を自分の死後も継続させたい意思をその旨を遺言に書き残すだけで残された相続人は納得してくれるかもしれません。

 

先ほども述べたように相続人が複数いる場合、個人事業を遺産分割してしまうと事業の継続が困難になる恐れがあります。

 

しかし極端な話、被相続人が事業用の資産しか持っていなかったとします。事業継続のために後継の長男にのみにこれを相続させた場合、他の相続人の不満がたまり遺留分減殺請求などを行われる可能性があります。そうなりますと大変厄介です。

 

その対処法として事業用の資産は全て長男(跡取り)に相続をさせ、長男は自分以外の相続人に対し10年間毎月5万円を支払う、その代わりとして遺留分の請求を行わないといったことを遺言に定めトラブルを防ぐことも可能です。

 

法人成りする

もしくは事業を法人化してしまい、株式の一部を跡取り以外の相続人に、経営権がある過半数の株式を跡取りが持つと配分することで遺産分割がうまくいくケースもあります。

 

会社として相続を行なった場合はあくまでも出資分の持分や株式しか相続ができません。

 

事業以外の資産がない場合でも株式であれば分割することがしやすいためトラブルの回避ができます。

 

亡くなった後で法人化させることは難しいので、トラブルを起こさないためには被相続人がなくなる前にあらかじめ法人化しておくことが良いでしょう。

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