後継ぎ遺贈と家族信託

後継ぎ遺贈とは遺言者が亡くなって遺言の効力が発生した後に、遺産を譲り受けた受遺者が死亡した場合、遺言者の指定するものに財産を渡すことです。

後継ぎ遺贈の問題点と効力

後継ぎ遺贈が認められるか否かでいうと、基本的には認められない可能性が高いです。様々な法令解釈がありますが、一般的には民法185条に違反すると言われています。

 

(占有の性質の変更)

第185条
権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合には、その占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めるのでなければ、占有の性質は、変わらない。

また民法には3大原則というものがあり、その中に所有権絶対の原則(人は何人からも妨害を受けることなく自分の所有物を自由に使用・処分・収益できる原則)があります。自分が相続や贈与で所有した財産(所有権)については、自分しか次の承継先を指定できません。つまり相続や贈与で遺産を受け取った人はその遺産を誰に渡そうが関係ないのです。言い換えれば2次相続以降の場合、最初の所有者の想いや意思は届かない可能性があるということです。

 

後継ぎ遺贈型の受益者連続信託

先ほども述べたように後継ぎ遺贈は民法の解釈上無効とされています。しかし信託法第91条に規定された仕組みを上手に利用することで二次相続以降の資産の承継先を指定できるようになります。これにより擬似的に後継ぎ遺贈が可能となります。

信託の場合、所有権という財産権を信託受益権という債権に転換する機能があります。債権は条件付きや一身専属的などなんでもありです。信託の権利転換機能をうまく生かすことで、所有権絶対の原則の適用を排除し、委託者が何段階にも財産の受取人を指定することが可能になるのです。(指定された人は自分が生存している間だけ経済的利益を享受できるが、亡くなったらその権利が消滅し相続人に引き継がれないようにする)

信託は相手に財産を渡した後も想いや意思を及ぼすことができます。

 

(受益者の死亡により他の者が新たに受益権を取得する旨の定めのある信託の特例)
第九十一条 受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む。)のある信託は、当該信託がされた時から三十年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有する。

受益者連続信託の期間制限

受益者連続信託は何段階も受益者を指定できますが、無制限ですとかえって将来、その関係者に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため信託が設定された時から30年という時間制限があります。

30年の意味ですが30年経ったら自動的に信託終了という意味ではなく、信託から30年が経った場合、受益者の交代は一度限りで30年経過後に新たに受益者となったものが亡くなるまで存続するということです。ただし信託財産の残余財産の帰属先指定ができるので、実質的には30年経過後においては2回分の受益者交代まで指定できることになります。

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