現在日本ではほぼ自筆証書遺言、もしくは公正証書遺言によって遺言が作成されています。
結論からいうと現在の日本では録音や動画、wordなどの文章によるデジタル遺言は認められておりません。なお遺言は民法に定められた方式以外では認められない旨が条文に明記されています。
第960条(遺言の方式)
- 遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。
近年の民法改正により自筆証書遺言の財産目録のみがwordなどでも認められるようになりましたが、遺言そのもの自体をデジタルにすることは今現在できません。規制緩和の傾向にありますが遺言書自体は旧来と変わらないことに注意が必要です。
デジタル遺言
日本では法整備はされていないものの、デジタル遺言と言われる民間サービスが提供されたりしています。たとえばLINE社のタイムカプセルなどです。
法的な根拠はありませんが、被相続人の意志を残すものとして有効です。また財産がそこまでなく、相続人も一人などトラブルになる可能性が少ない人や遺言の作成となる場合どうしてもハードルが高いため、自分の意志を示すためとして利用されることもあります。
またパスワードの情報やお墓の管理方法の意志などを付随させたり、エンディングノートの一環として活用されるケースがあります。
今後のデジタル遺言の展望
現在の日本ではデジタル遺言は認められておりませんが、国会などで近年議論が行われたり政府自体が2024年を目標にデジタル遺言の大枠や方針などを出すなど、少しずつ活発になってきております。またデジタル庁も創設され法務省とデジタル庁が連携をとり、慎重に進めていくことになるでしょう。
ただし課題も多いのが現実です。どのように遺言者の意思であることを担保するのか?またマイナンバーとの紐付けなどをする場合、法改正を伴うこと、どこまでをデジタルとして認めるのか?などがあります。
海外での事例
海外でもデジタル遺言が活用されている例は少ないようです。たとえばアメリカでは国の大きな枠組みとして電子遺言法が2019年に制定されましたが、現在でもネバダ・インディアナ・アリゾナ・フロリダなどの限られた州のみでの運用となっております。
一部の州では遺言の要件を満たしていれば電子でも認められるとのことです。
コロナウイルスの影響で非対面、非接触の機会が増え、ハワイ州では遺言の一部をビデオが暫定的に認められるなど動きはあるものにまだまだ紙がベースで部分的に電子化する程度にとどまっているようです。
フランスなどでは日本と同様一切デジタル遺言は認められておりません。本当に本人の意思で行われているものなのか?捏造や改竄がないか?など証明することが難しく運用の課題は山積みです。