会社の承継をするにも、様々な方法で承継することができます。通常通り遺言で承継するのもいいのですが、それだと問題が起きる可能性や税金面等で不利になる可能性もございます。家族信託を利用することでうまくそれらを回避することが可能です。
今回は「中小企業の円滑な事業承継」の場合について家族信託を利用した実例をご紹介いたします。家族信託とは何か?について簡単に解説しているページはこちらにありますので、合わせて参考にしてください。
現在の状況
Aさん(80歳)は埼玉県川口市にある株式会社kawaguchiの創業者です。現在は会長職についており自社株を100%所有しておりますが経営は代表取締役の長男Bさんに任せております。将来的には長男Bの後継者として修行を積んでいる孫Cに任せたいと考えています。Aさんの推定相続人は長男と長女の2人です。二人とも仲が悪いわけではなりませんが、Aさんの財産のほぼ全てが自社株のため長女の遺留分である1/4には到底届きません。今のままだと自社株を一部相続をせざるを得ない状況です。円満に解決できる方法はありますでしょうか?
家族信託による解決方法
家族信託の契約
・委託者 : Aさん
・受託者 : 長男Bさん
・受益者 : 1.Aさん、2.Aさんの孫3/4、長女1/4、3.長女持分1/4につき孫
・指図権者 : Aさんが元気な時はAさん、行使できなくなったらBさん
・信託財産 : 株式
・信託期間 : 受託者と受益者と信託監督人の合意
・残余財産の帰属先指定 : 孫
家族信託のポイント
現状ではAさんが100%の大株主になっているためもしAさんに万が一のことがあると株主総会ができないなど機能不全を起こすリスクがあります。そこでリスク回避として全株式を信託財産に入れ株主としての権利は受託者が対応できるようにいたします。ただしAさんが築きあげた会社ですのでAさんの思いを尊重し、Aさんが元気なうちはAさんが指揮をとります。今回の場合Aさんに遺留分を補填する十分な資産がありませんので長女にも株式を信託財産とする信託受益権を孫と共有する形になります。長女が亡くなった時全て孫が引き継げるように設定しておきます。このようにすることで受託者であるBさんが株主としての権利は行使でき、長女は配当のみを得られる無議決権株式を保有しているような形となり経営に口出せなくなります。また一気にAさんから孫へ株が行くため将来の相続税対策になる可能性も秘めています。
家族信託のその他実例はこちらにまとめてあります。
家族信託の機能を生かした実例はこちらを参考にしてください。