子供が複数人(相続人が複数人)いる場合は、どのように財産を分割するかが課題になります。
財産が現金や預貯金のように綺麗に分けられるものであれば、非常に楽なのですが、中にはきちんと分けられないものがあります。その代表例が不動産です。
不動産は共有名義にすることも可能ですが、共有名義にすると売却時に共有名義人全員の同意が必要になったり、共有者がなくなると相続が発生し権利関係がさらに複雑化する恐れがあります。共有名義にすることによりデメリットも多々生じるのです。
今回は「不動産を子供たちに平等に相続させたいものの、共有名義にすることは避けたい」場合について家族信託を利用した実例をご紹介いたします。家族信託とは何か?について簡単に解説しているページはこちらにありますので、合わせて参考にしてください。
現在の状況
Aさん(80歳)は埼玉県川口市に収益性のあるアパートを1棟所有しています。Aさんには推定相続人となる子が3人(B,C,D)いてそれぞれに平等に相続させたいと考えております。しかし仮にBにアパートを相続させてしまうとC,Dに渡す他の財産はほとんどなく平等な相続が実現しません。また共有名義にすることは先述のようなデメリットが生じるため避けたいと考えております。
その一方Aさんはしばらくの間アパートは売却せず保持しておきたいと考えています。アパート自体の管理はBさんに任せようと思っていますが、数年後には老朽化に伴う建て替え工事の問題も出てきそうなので将来の管理処分についてはB,C,Dの間で揉めて欲しくないと思っています。今回のケースも家族信託を利用することにより、上手くまとめることができます。
家族信託による解決方法
家族信託の契約
・委託者 : Aさん
・受託者 : 子Bさん
・受益者 : Aさん、Aさんの死後はBさん、Cさん、Dさん(各自受益権割合は1/3)
・信託財産 : 自宅・賃貸アパート・現金
・信託期間 : 無期限
・残余財産の帰属先指定 : 信託終了時の受益者
家族信託のポイント
今回の家族信託ではAさんと子Bさんの間で収益性のあるアパートを信託財産とする信託契約を締結します。具体的な中身としては上記の通り、アパート管理する受託者をB、受益者をAとします。Aさんの死後は子が受益者となり、それぞれの受益権を1/3とします。
信託契約を結ぶことによりAさんが生きている間は、Bさんが準備期間としてアパートを管理します。仮にAさんが認知症になったり寝たきりなどになった場合でも、Bさんが対応することが可能です。また生きている間にBさんがきちんと管理できるかAさんは見極めることができます。
Aさんの死後は所有権を共有させるのではなく、受益者としてB,C,Dに受益権を共有させることで所有権の共有と同じような状態を作ることができます。C,Dは配当としてお金をもらい、Bさんのアパート管理には口出しすることはできません。最終的にこのアパートを売却する場合、契約終了により不動産が3人で共有になってしまったらただ問題を先送りしていることになります。したがって信託契約の中に不動産を売却して等分に分けるなどの文言を記載しておくべきでしょう。