近年、少子化や過疎化により空き家問題が続出しております。放置したままにしておくと最悪の場合、放火にあったり、災害に巻き込まれたり、倒壊し近隣住民に迷惑をかけたり、大きなトラブルを引き起こす可能性があります。したがって、誰も使わない場合、早めに処分したいものです。
今回は「空き家となる自宅を確実に売りたい」場合について家族信託を利用した実例をご紹介いたします。家族信託とは何か?について簡単に解説しているページはこちらにありますので、合わせて参考にしてください。
現在の状況
Aさん(80歳)は埼玉県川口市に自宅があり、その不動産を所有しております。奧さんには先立たれてしまい、娘Bもいるのですが娘Bはすでに結婚してしまい今は1人です。数年前までは自分一人で生活することは問題なかったのですが、年々体が自由に動かなくなってしまい、今年からは介護施設に入所しました。自宅はあるのですが誰も住んでいないため、自宅が空き家になってしまいました。娘Bは嫁ぎ先で家を購入しているので自宅を使うことはありません。娘BはAさんの自宅を処分したいのですが家財の処分や、Aさんの気持ち的な問題からすぐの売却は難しいと考えております。Aさんは体の衰えだけでなく、物忘れが激しくなってきており、売却の時に支障が出る可能性がございます。Bさんはそれを心配しております。
家族信託による解決方法
家族信託の契約
・委託者 : Aさん
・受託者 : 娘Bさん
・受益者 : Aさん
・信託財産 : 自宅
・信託監督人 : 司法書士
・信託期間 : Aさんが亡くなるまで
・残余財産の帰属先指定 : 娘Bさん(Aさんの存命中に契約終了した場合はAさん)
家族信託のポイント
Aさんは娘Bさんとの間で上記のような家族信託契約を結びます。(Aさんが受益者兼委託者、Bさんが受託者)また信託監督人として司法書士を指名します。受益者である娘Bには司法書士の同意を得た上で自宅不動産を売却できる権限を与えておきます。受託者である娘Bには自宅不動産を売却できる権限を与えておきますが、怪しい業者などに騙されてしまう可能性もあるため司法書士の許可を得てから処分という形をとります。娘Bは受託者として登記簿上の形式的な所有者となるので娘Bが売主として売却し、その売買代金から仲介手数料などの経費を清算するところまで行います。売却後の信託契約の存続については2通り考えられます。
1つはAさんがなくなるまで現金化された信託財産を娘Bが管理を継続するパターンです。Aさんの不測の事態に備え万全の体制を整えるのであればこのように信託を継続するのが望ましいでしょう。一方不動産売却という目的が達成されたので信託契約を解除するパターンもあります。
家族信託の機能を生かした実例はこちらを参考にしてください。